東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1320号 判決
一、被控訴人がドイツ国プフオルツハイム市に本店をもち、時計バンドの製造販売を目的とする会社であつて、伸延可能なリンクバンド(通称パーフエクトバンド)につきドイツ国の特許権を有し、日本においても、右発明にかゝるリンクバンドにつき昭和二六年四月一〇日に特許を出願し(昭和二七年特許願第四、五六七号)、昭和二九年六月三日の公告ののち、同年一一月三〇日に、特許第二〇九、七八八号として登録を受けたこと、および右特許の権利範囲が「中空リンクが任意の断面形の円筒状鞘のバンド縦方向において互に転位された二組により形成され、結合リンクがバンド縦縁中に設けられたU字形結合彎曲片により形成され、該結合彎曲片は各二個ずつ、その一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入され、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接した鞘中に挿入され、かつ各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し、更にバンドの伸延あるいは彎曲に際して発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられたことを特徴とする、中空リンク及びこれを互に関節的にかつ伸延可能に結合し発条作用に抗して旋回し得べき結合リンクよりなる伸延可能なリンクバンド、ことに腕時計用バンド」にあること、そして被控訴人が右特許にかゝる伸延可能なリンクバンドの模造品であると主張する物件中、別紙目録二の図面番号Ⅰの表示する腕時計用リンクバンドを控訴人野口および同有限会社山田製作所が製造、販売、拡布しており、また控訴人株式会社館林商店がこれを販売、拡布していたことについては、当事者間に争がなく、また図面番号Ⅲのいわゆる「マークⅦ」なる腕時計用リンクバンドを控訴人らが製造、販売、拡布し、あるいは販売、拡布していたことも、控訴人らの争わないところである。
二、控訴人らは、まず、被控訴人はすでに右特許権を訴外株式会社竹本商店に譲渡し、現在その特許権を有しない、と主張するが、成立に争のない甲第一号証(特許原簿謄本)によれば、被控訴人がいまなお右特許の権利者であると一応認めることができる。その他この点に関し控訴人らの提出する疏明については、当裁判所も原判決とその判断を同じくするので、原判決中その部分を引用する。当審における証人大橋正雄の証言をもつてしても、これを左右するに足りない。
三、そこで、控訴人らの前記各時計バンドの製造、販売等が、被控訴人の前記特許権を侵害するかどうかについて、考える。成立に争のない乙第二〇号証の二(渡辺軍治に対する鑑定人調書および山田績に対する本人調書各写)、同第二一、第二二号証(鑑定人元橋賢治作成の各鑑定書)、同第二六号証(弁理士大野晋作成の鑑定書)、同第二七号証の一(ドイツ特許明細書)、当審証人滝野文三の証言により成立を疏明し得る同第一五号証の一、二(弁理士滝野文三作成の鑑定書)、当審証人渡辺軍治の証言により成立を疏明し得る同第二〇号証の一(弁理士渡辺軍治作成の鑑定書)、弁論の全趣旨により一応成立を認め得べき同第一〇号証(弁理士大橋正雄作成の鑑定書)ならびに当審証人滝野文三、渡辺軍治の各証言を参酌し、成立に争のない甲第一一号証(本件特許公報)を検討するのに、前記当事者間に争のない本件特許の権利範囲のうち、「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し、更にバンドの伸延あるいは彎曲に際して発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられ」とされていることの意味は、「結合彎曲片を鞘中に確保する機能と、バンドの伸延あるいは彎曲に際して発条的に反対作用する権能との二つの機能をもつた彎曲板発条が、各鞘中に設けられていること」と読解することが自然であり、したがつて各鞘中に設けられた彎曲板発条が、バンドの伸延、収縮という本来の機能を営なむに際し、結合彎曲片を鞘より容易に抜け出させないように確実に鞘中に保持する何らかの具体的な機構あるいは手段をそなえていることが、本件特許発明の構成上必須の要件であると認めるのが相当である。前記甲第一一号証の本件特許明細書の発明の詳細なる説明の項中に、「特に間隙を以て鞘中に座着する結合彎曲片の脚は高さよりも広き幅を有し且その内側上に横溝を備へ該横溝中に縦方向に鞘中に設けられたる板発条がその彎曲端を以て掛合する如く構成せらるることを得」と記載し、次に図面によりこの板発条の彎曲端と結合彎曲片の横溝との掛合状態を詳細に説明したうえ、特許請求の範囲の附記として「1間隙を以て鞘10、11中に座着する結合彎曲片14の脚15、16が高さよりも広き幅を有し且その内側上に横溝17、18を備へ該溝中に縦方向に鞘中に設けられたる板発条12がその彎曲端13を以て掛合する特許請求の範囲記載のリンクバンド」と記載してあることは、もとより本件特許の一実施例を示すものにほかならないとしても、特許請求の範囲の項に「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し且バンドの伸延或は彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条12が設けられたることを特徴とする」として、本件特許の要件を限定し、かつ発明の詳細なる説明の項の冒頭にも、「本発明の要旨とする所は」と書き出して、「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保しバンドの伸延或は彎曲に際し結合彎曲片の旋回に対し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられたる点に存す。」と明記してあることは、本件特許のリンクバンドのような物品は、単に鞘、結合彎曲片及び彎曲板発条の三部材をそなえただけでは完全な製品とならず、これら各部材の連結を確実にするため、とくに結合彎曲片の脱出を防止するための何らかの手段が施されてあることを必要とするところ、前記甲第一一号証の本件特許明細書には、右確保手段として前記のとおり結合彎曲片と彎曲板発条との掛合についてのみ詳細に説明し、他の部材による確保手段について何ら想到した形跡のないことと相まつて、本件特許にかゝるリンクバンドは、たとえ前記実施例に示したとおりの状態ではなくとも、板発条と結合彎曲片とを何らかの方法で鞘中で掛合させて、後者が脱出しないように確保している点を発明構成上の一要件とするものと解しなくてはならない。
成立に争のない甲第四八号証、第五〇号証、当審証人田代久平の証言により成立を疏明し得る同第三〇号証(弁理士田代久平作成の各上申書)、当審証人小川潤次郎の証言により成立を疏明し得る同第三一、第三二号証(弁理士小川潤次郎作成の鑑定書)および当審証人田代久平、小川潤次郎の各証言中には、本件特許の権利範囲に「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し」といつていることは、彎曲板発条自体の形状より生ずる初張力および結合彎曲片を鞘中に挿入した場合に生ずる張力の総合張力によつて、彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に確保することを意味するとの見解が示されているが、前記甲第一一号証の本件特許明細書には、発明の詳細な説明の項に、「脚15及16の厚さは鞘10、11の内径に比して板発条12が結合彎曲片14の脚15、16の挿入に依り彎曲片14が第1図より認めらるゝが如き大体に於て垂直なる位置に圧迫せられバンドリンクが互に収縮せらるゝが如き軽微なる最初張力をこそ得るが如き(第7図)寸法となされたり(中略)バンドを伸延する場合には(第2図、第4図及第8図)結合彎曲片14は旋回せられ此の場合脚15及16は鞘10及11中にて回転し板発条12は押圧せられその張力は高められ従て該張力はリンクバンドに於ける牽引が中絶する場合結合彎曲片14は再び第1図に依る殆んど垂直の位置に圧迫せられ鞘10及11は収縮す」と記載されているように、彎曲板発条のもつ張力はもつぱらバンドの伸延、収縮の作用に関連して開示されており、結合彎曲片を鞘中に確保することにこれを利用する思想は全く顕われていない。もちろん、彎曲板発条は結合彎曲片を鞘の内側に圧迫し、鞘の内部でそれが移動しないように抑えているということはあろうが、本件特許においては、「鞘の開放端」とし、鞘の端部が開放されていることを前提としていること明らかであるから、それだけでは結合彎曲片が鞘の外部に脱出しないように確実に保持している、すなわち確保しているというには足りないことは明らかであつて、発明者がかような間接的な保持の手段をもつて満足していたとは、とうてい考えられない。かえつて、右張力の点は、バンドの伸延の場合結合彎曲片の脚は鞘中で傾斜して彎曲板発条を平圧し、このため彎曲板発条は僅かではあるが鞘中で長く伸びてその先端で結合彎曲片の脚を鞘中より外方に押し出そうとする力が同時に生ずることが明らかであつて、バンドの伸延、収縮のくり返しによるか、バンドをねじつたりしたような場合にはこの押し出そうとする力のくり返しによつて結合彎曲片は少しずつ押し出され、ついには鞘外に逸脱するようなおそれが十分認められるので、結合彎曲片が彎曲板発条の張力だけで鞘中に確保されているとの見解はこれを採ることができない。したがつて彎曲板発条に何らか積極的に結合彎曲片との連繋手段が施されてあることが、本件特許の必須不可欠の要件であると解するのが相当である。
四 本件仮処分の対象物件中、仮処分決定添附物件目録表示の時計バンドは、被控訴人の本件特許の権利範囲に記載されたとおりの構造のものであるから、被控訴人の許諾なくしてこれを製造、販売、拡布することが被控訴人の特許権の侵害となることは、いうまでもない。そこで、被控訴人が右特許の模造品であると主張する別紙目録二記載の物件、すなわち図面番号Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの表示する各時計バンドが右特許の権利範囲に属するかどうかについて判断する。
(一) 前記乙第一〇号証、第一五号証の一、二、第二〇号証の一、第二一、第二二、第二六号証(各鑑定書)に、成立に争のない同第六号証、第一六、第一七号証の各二(登録第四五九、八〇二号および第四五一、二九二号の各実用新案公報)、右第四五九、八〇二号の登録実用新案の実施品と一応認められる検乙第一号証の一、二を併せてみれば、これらの各物件の構造は次のようなものであるということができるであろう。(外装の点は除く。)
まず、図面番号Ⅰの時計バンドは、
(イ) 中空リンクの断面が<省略>形状の角筒状をなし、その角筒の両端部分にそれぞれ二個の折曲舌片(2)を備えた鞘(1)のバンド縦方向において互に転位された二組により形成され、
(ロ) 結合リンクが、バンド縦縁中に設けられた<省略>形状結合彎曲片(5)により形成され、この結合彎曲片(5)は各二個ずつその一方の脚(6)をもつて一方の組の鞘(1)の開放端に挿入され、その他方の脚(6)をもつて他方の組の転位して位置する隣接の鞘(1)中に挿入され、
(ハ) 鞘(1)中に挿入された結合彎曲片(5)が鞘(1)から抜け出ないように鞘(1)の折曲舌片(2)を結合彎曲片(5)の肩の段部にまで折り曲げることによつて確保し、
(ニ) さらに各鞘(1)中には、バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用をする彎曲板発条(7)が設けられた。
中空リンクおよびこれを互に関節的にかつ伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回し得べき結合リンクより成る伸延可能な腕時計用バンドである。
次に、図面番号Ⅱの時計バンドは、
(イ) 中空リンクが、断面<省略>形状の角筒状をなした鞘の上片(1)と下片(6)との、上片はその上面に両側縁寄りの部分を内方に向つて漸次低くした斜面(2)を形成した鞘(1)(6)のバンド縦方向において互に転位された二組により形成され、
(ロ) 結合リンクが、バンド縦縁中に設けられた内側に互に対向する突出部(9)をもつたU字形結合彎曲片(8)により形成され、この結合彎曲片は各二個ずつその一方の脚(10)をもつて一方の組の鞘(1)の開放端に挿入され、その他方の脚(10´)をもつて他方の組の転位して位置する隣接の鞘(6)中に挿入され、
(ハ) 各鞘中には、両端部を折り曲げて掛止部(5)を形成した彎曲板発条(4)が設けられ、この彎曲板発条によつてバンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用を営なませるとともに、その掛止部(5)を結合彎曲片(8)の突出部(9)に掛止することによつて結合彎曲片を鞘中に確保させるようにした前同様の腕時計用バンドである。
さらに、図面番号ⅢのいわゆるマークⅦと称せられるものは、
(イ) 中空リンクが、断面<省略>形状の角筒状をなした鞘の上部リンク鞘と下部リンク鞘(1)(11)の、少なくとも一方(11)には角筒の両端部分にそれぞれ折曲舌片(2)を備えた鞘(1)(11)のバンド縦方向において互に転位された二組により形成され、
(ロ) 結合リンクが、バンド縦縁中に設けられた<省略>形状結合彎曲片(5)により形成され、この結合彎曲片(5)は各二個ずつその一方の脚(6)をもつて一方の組の鞘(1)の開放端に挿入され、その他方の脚(6)をもつて他方の組の転位して位置する隣接の鞘(11)中に挿入され、
(ハ) 鞘(11)中に挿入された結合彎曲片(5)が鞘から抜け出ないように鞘(11)の折曲舌片(2)を結合彎曲片(5)の肩部(3)にまで折り曲げることによつて確保し、
(ニ) さらに各鞘(1)(11)中には、バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用をする彎曲板発条(7)が設けられた前同様の腕時計用バンドである。
(二) そこで、これらの仮処分対象物件の構造を本件特許にかゝるリンクバンドの構造と比較してみる。
まず、図面番号Ⅰのバンドと本件特許のバンドとが、その鞘の形状において、前者の鞘が断面<省略>状の角筒状をなしていることは、後者の「任意の断面形の円筒状」とすることの一実施態様ということができよう。しかし、本件特許バンドにおいて、彎曲板発条が積極的に結合彎曲片を鞘中に常に確実に保持、すなわち確保する機構あるいは手段をそなえていることが、発明構成上の必須要件であると解すべきことは、前にみたとおりであるところ、図面番号Ⅰの時計バンドにおける結合彎曲片の確保方法をみるのに、鞘の両端部分に設けられた折曲舌片(2)が、鞘の外部から結合彎曲片の両肩部を抑えつけることにより、これを鞘から抜け出さないようにしているのであつて、彎曲板発条には結合彎曲片を鞘中に確保するための何らの連繋手段が施されておらず、彎曲板発条によつて結合彎曲片を鞘中に確保しようとする手段および着想を全然欠如している。(彎曲板発条のもつ張力について、それが右確保手段というに足りないことは、前に判断したとおりである。)換言すれば、本件特許バンドにおいては、鞘中に収められた彎曲板発条が、バンドの伸延あるいは彎曲に際して発条的に反対作用をする機能とあわせて、結合彎曲片を鞘中に確保する機能をも営なんでいるのに対し、図面番号Ⅰの時計バンドにおける彎曲板発条は前者の機能をもつだけで、後者の機能はこれを有していない点において、たとえその他の点で一致するところがあつても、右時計バンドは本件特許の権利範囲に属しないといわなくてはならない。右時計バンドは鞘の両端部分に設けられた折曲舌片がいわば鞘の外から結合彎曲片を確保しているのであつて、本件特許明細書中には、かような確保手段をうかがわしめる記載はどこにも存在しない。しかも、この確保手段の相異は、本件特許において採用されている板発条に連繋機構を設ける方法においては、確保が確実であることと、バンドの長さの調節が容易であつて、何回もくり返して調節ができる、という利点を有する反面、鞘中に掛合手段を設けるため鞘が多少太くなることをまぬかれない、という欠点があり、これに対して、図面番号Ⅰの時計バンドのように、鞘の端部を折り曲げて確保する方法にあつては、たとえば、婦人用時計バンドのように細いバンドを作ることもできる、という利点がある反面、折曲舌片が十分長くないと確保が不確実で、使用中切れるおそれがあることと、また長さの調節のためには、そのつど折曲舌片を起して鞘の増減を行つた後に、再びこれを折り曲げなければならない手数を要し、しかもこれを数回くり返せば、舌片は切れて鞘の役目を果さなくなり、したがつて、調節回数には自ずと限度があることの欠点がある、というように、その作用、効果の上にも看過することのできない差異をもたらすので、これをもつて、設計上の微差であるとしたり、あるいは両者をもつて均等発明であると解することはできない。次に、図面番号ⅢのいわゆるマークⅦと称せられる時計バンドは、図面番号Ⅰの時計バンドにおける結合彎曲片が<省略>形状をなして、その両肩部を鞘の折曲舌片で押えているのに対し、このバンドの結合彎曲片は<省略>形状をなし、その低い方の肩部を鞘の折曲舌片で押えて、結合彎曲片を鞘中に確保しているという構造上の微差があるだけであつて、他の点では前者と全く同一構造で、その作用、効果も亦全く同一であると認められるので、前者につきさきに判断したのと同じ理由で、マークⅦの時計バンドも、本件特許の権利範囲に属せず、かつこれと均等発明、あるいは単なる設計変更の関係にあるとすることもできないものと認むべきである。しかし、図面番号Ⅱの時計バンドは、本件特許が中空リンクの形状を任意の断面形の円筒状鞘としているのに対して、断面<省略>状の角筒状、とくにその上片においては、上面に両側縁寄りの部分を内方に向つて漸次低くした斜面を形成した中空リンクとするほか、両者同一構造である(彎曲板発条と結合彎曲片との掛合の点も)。そして、本件特許において断面の形状を「任意」としながら、中空リンク全体を「円筒状」としていることは、表現に多少あいまいな点がないでもないが、「円筒状」といつても、結局筒状という程の意味と解せられ、「任意」といつても、要するに、中空リンクが関節的に、かつ伸延可能に結合リンクにより結合され、中空リンク内に挿入された板発条の発条作用に抗して全体が伸延可能になる範囲において任意であつて、その範囲で嗜好的に適合させればよいという程の意味と解すべきである。してみれば、図面番号Ⅱの時計バンドの中空リンクの前記の形状も、本件特許における任意の範囲に含まれるものと認められるから、その他の点でも両者が全く一致する以上、図面番号Ⅱの時計バンドのみは、本件特許の権利範囲に属するものといえよう。
五、成立に争のない甲第二七号証、第六一号証の一、二(各決定)第五三号証(審決)、第四八、第五〇号証(各上申書)、原審証人竹本茂次の証言により成立を疏明し得る同第八、九号証、当審証人田代久平の証言により成立を疏明し得る同第三〇、第三三号証、当審証人小川潤次郎の証言により成立を疏明し得る同第三一、第三二号証、弁論の全趣旨により一応成立を認め得べき同第二六号証(各鑑定書)ならびに当審証人田代久平、小川潤次郎の各証言中には、本件特許の権利範囲に関し、前記当裁判所の判断と相反する見解が示されているけれども、これらの見解は本件特許明細書(甲第一一号証)に開示されてある限度をこえてひろく特許の権利範囲を認めようとするものであるというべく、採用することができない。また、成立に争のない甲第二五、第二八、第二九、第三四ないし第四六、第五四ないし第六〇号証(各外国判決等)に顕われている見解も、いずれも外国法制の下における外国特許に関する判断であつて、前示結論を左右するに足りない。成立に争のない甲第五二号証(審決)も本件における判断と関係がなく、その他前示一応の認定をくつがえすべき資料がない。
六、控訴人らは、本件仮処分決定添附物件目録記載の物件および別紙目録二の図面番号Ⅱの物件を製造し、あるいは販売、拡布したことがなく、また将来そのおそれもない、と主張する。これらの物件中、本件仮処分決定添附物件目録記載のものは、本件特許第二〇九、七八八号の権利範囲に示されているとおりの物件であるが、成立に争のない甲第二三号証(仮処分調書)には、昭和三〇年八月一九日に控訴人株式会社館林商店の大阪出張所において、特許番号第二〇九、七八八号の伸延可能なるリンクバンドにつき仮処分が執行された旨の記載があるのみならず、控訴人らは本件においても被控訴人の右特許権の実施許諾を得た旨主張しているのであるから、少なくとも控訴人らが将来右特許にかゝる物品を製造、販売、拡布するおそれが全然ないとは云えないであろう。しかし、別紙目録二の図面番号Ⅱの物件について、控訴人らが現在これを製造、販売、拡布していること、あるいは将来これを製造、販売、拡布するおそれがあることについては、これを疏明し得べき何らの資料がない。
七、控訴人らが本件特許権につき被控訴人から実施許諾を得ている、との主張については、当裁判所も原判決と同じ理由によつて、いまだ本件当事者間にそのような実施契約の成立したことを疏明するに足りないとするものであつて、この点に関する原判決の理由の記載を引用する。(ただし、原判決書一八枚目―記録三四九丁―裏九行目に「折衡」とあるのは「折衝」の誤記であることが明白である。)当審証人大橋正雄の証言によつても、右主張事実を疏明するに足りない。控訴人株式会社館林商店の、同控訴人は高橋米吉が被控訴人の実施許諾を得て製造した製品を販売している、との主張に関する当裁判所の判断も、原判決と同じであるので、原判決のこの点に関する理由の記載を引用する。乙第一二号証(浅田泰三の上申書)によつても、本件仮処分の対象とされた原決定添附物件目録の物件のすべてが同控訴人の正当に販売し得べきものであることを疏明するに足りない。
八、要するに、本件仮処分は、対象物件中、仮処分決定添附物件目録記載の特許第二〇九、七八八号にかゝる物件についてのみ、その理由があるが、別紙目録二の図面番号ⅠおよびⅢの物件については、それが被控訴人の特許権の権利範囲に属することが疏明されず、同Ⅱの物件については、控訴人らがこれを製造、販売、拡布している事実も、また将来これらの行為をするであろうというおそれも疏明されないので、ひつきよう仮処分の必要性につきその疏明がないといわざるを得ない。さらに、保証をもつて疏明に代えることも、この場合において適当でない。よつて、爾余の争点に関する判断を省略して、本件仮処分決定を認可した原決定を主文第二項のとおり変更することとする。
〔編註その二〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。
(一) 被控訴人の主張
1、本件仮処分の趣旨は、
(イ) 特許番号第二〇九、七八八号の伸延可能なリンクバンド
(ロ) 別紙目録二の図面番号Ⅰの表示するリンクバンド
(ハ) 同図面番号Ⅱの表示するリンクバンド
(ニ) 同図面番号Ⅲの表示するリンクバンド
について、控訴人野口および同有限会社山田製作所に対しては製造、販売、拡布を、控訴人株式会社館林商店に対しては販売、拡布を禁止するとともに、これらの構造をもつ物件の既製品および半製品に対する控訴人らの占有を解いて被控訴人の委任する東京地方裁判所執行吏にその保管を命ずるにある。控訴人らは右(ニ)の図面番号Ⅲのものは仮処分申請にあたつて仮処分の目的として示されておらず、かつ本案訴訟においてもその目的になつていないから、これをも仮処分の対象に包含させることは不法であると主張するが、そもそも本件仮処分の目的は、当初前記(イ)の物件ならびにその類似の構造をもつ物件とされていたものを、類似の概念を明確化し特定づけるため、前記のとおり表示を改めたにすぎないのであつて、仮処分の対象を拡大したものと解すべきではない。しかも、図面番号Ⅲのものは、同番号Ⅰの実用新案権の権利行使の一態様に過ぎないことは、控訴人ら自らこれを認めているところである。仮に図面番号Ⅲのものが当初仮処分の対象として明示されてなかつたとしても、本件仮処分は被控訴人の特許権の保護を求めることを目的としたものであつて、仮処分の目的たる私法上の権利の発生を来した基本の事実関係には何ら異なるところはなく、口頭弁論終結にいたるまでその変更は許容せらるべきである。本案訴訟において右物件を訴訟の目的に加えなかつたのは、時間のずれだけのことであつて、被控訴人は昭和三四年一月一六日附訴状訂正の申立によつてこれを追完している。
2、控訴人らは被控訴人から本件特許の実施許諾を受けていると主張する。しかし、昭和二九年九月ごろ被控訴人の代理人として来日したボイロードは、昭和二八年春ごろから本件パーフエクトバンドの製造に従事していた訴外株式会社竹本商店に対し、日本における本件パーフエクトバンドの製造販売の実施を許諾する旨の仮契約を締結したが、右竹本商店以外に被控訴人は何人にも実施許諾をしたことがない。エスバンド工業協同組合は前記ボイロードに対し本件特許の実施許諾を得ようとして、交渉したが、成功しなかつたのである。その間被控訴人の特許出願公告に対して異議申立を行つていた横田康夫および高橋米吉が異議を取り下げ、本件特許が与えられたが、控訴人らは、その際前記竹本商店が高橋の製造にかゝるパーフエクトバンドを毎月一定数量に限り買い取ることを条件として右異議を取り下げさせたものであり、同時に高橋と同様パーフエクトバンドを製造していた業者の団体である金属バンド研究会の代表者越村暁久も竹本商店と交渉した結果、昭和二九年一一月三日に竹本、高橋、越村の三者間に竹本が高橋および金属バンド研究会員の製造したパーフエクトバンドを仕入れることの契約(乙第九号証はその契約書)が締結されたことをもつて、実施許諾ありと主張するもののようである。しかし、右契約により竹本商店は越村の指定した金属バンド研究会所属業者の製造したパーフエクトバンドを仕入れることになつたが、これらの業者は他にこれを販売することができなかつたものであるから、金属バンド研究会所属の業者は竹本商店の製造に関する下請に過ぎなかつたことが明らかである。しかも、右契約は、その後越村から何らの申入がなく、竹本商店は警告文(甲第二一号証)を発するにいたり、事実上実施の運びにならなかつたものであるから、とうていこれをもつて被控訴人がこれらの業者に実施許諾を与えたとすることはできない。控訴人株式会社館林商店は、さらに、同控訴人は本件特許の実施許諾を得ている高橋米吉の製造したバンドを販売したに過ぎない、と主張する。しかし、前記契約書(乙第九号証)の文言によれば、高橋はその製造したパーフエクトバンドの若干数量を竹本茂次以外の者に売り渡すことができることになつているかのように見えるが、同人は株式会社竹本商店に対して、その指定以上の数量を製作しないこと、および製作したものは全部同会社に納入し、他人には絶対に譲渡しないことを約した誓約書(甲第一八号証の一)を差し入れ、事実上も同会社の下請に過ぎなかつたのであるから、控訴人館林商店が高橋からの仕入品のみを販売したというのは虚偽の主張である。いずれにせよ、控訴人らの主張は理由がない。
3、本件係争の焦点は、被控訴人が本件特許の製品に類似する構造を有するものとして、明確化し特定づけた前記図面番号Ⅰ、ⅡおよびⅢの構造のリンクバンドの製作、販売、拡布が本件特許権を侵害するかどうかにかゝつている。そのうち、図面番号Ⅰのものは、実用新案登録第四五九、八〇二号として、同番号Ⅱのものは実用新案登録第四五一、二九二号としてそれぞれ実用新案権の登録を経ており、また同番号Ⅱのものは右登録第四五九、八〇二号の実用新案権の一の行使態様であるが、そのことが被控訴人の特許との牴触を阻却するものではないこと、いうまでもない。けだし、特許権は新規な工業的発明に対し、実用新案権は実用ある新規の型の工業的考案に対しそれぞれ与えられるものであるから、実用新案権を行使するについても、その権利の内容が特許権の権利範囲に属する場合においては、特許権者の実施許諾を得る必要があることは当然である。
被控訴人の特許権の構成要件は、
(1) 中空リンクが任意の断面形の円筒状鞘のバンド縦方向において互に転位せられた二組により形成せられていること
(2) 結合リンクがバンド縦縁中に設けられたU字形結合彎曲片により形成せられていること
(3) 結合彎曲片は各二個ずつその一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入せられ、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接せる鞘中に挿入せられていること
(4) 各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し、かつバンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられていること
の四点であり、本件特許は右のような作動をする「鞘」と「彎曲板発条」とより成る「中空リンク」と「結合リンク」とを構成要素とするものである。
而うして、図面番号Ⅰ、すなわち実用新案登録第四五九、八〇二号の構成要件をみるのに、
(1) 両縁側2を折り曲げて天蓋と周壁とを形成し、その両側縁の爪4に両端部8を上方に折り曲げた底板7の両側縁を支持せしめて成る函状鎖片1の両端部内に、
(2) ほゞU字形に折り曲げてその両脚部6の内側面をほゞ平坦に形成した各一対の連片5、5の各一方の脚部を揃えて挿入するとともに、各他方の脚部を該函状鎖片1を腹合せに対向する両隣りの函状鎖片1の両端部内にそれぞれ挿入し、
(3) それらの各脚部6、6の内側面を常時に底板7の両端面を弾圧せしめるとともに、各連片5の折曲部を前記両端部2に被覆せしめることによつて、多数の函状鎖片を順次に連鎖し、かつ各両端部2の何れか又は全部にそれぞれ切欠3を設けて成る鎖帯である。
本件特許権を構成する主要部分は「鞘」、「U字形結合彎曲片」および「彎曲板発条」であることは、前記のとおりであるが、右図面番号Ⅰの構造をもつものの主要部分も亦、用語を異にするとはいえ、「函状鎖片1」、「連片5」および「底板7」であつて、両者は、主要部分において全く同一であり、この点は、両者の最も重要な類似性を示すものである。さらに、本件特許は、この三重要部分を結合せしめる工業的発明であるので、これらの重要部分およびその結合状態について、両者を比較すると、
(1) 前記実用新案の構成要件(1)の「両側縁2を折り曲げて………を支持せしめて成る函状鎖片1」は本件特許権の構成要件(1)の「任意の断面形の円筒状鞘」に対応し、後者は任意の断面形としてその形状を毫も限定していないから、前者は全く後者の発明内容に包含されるものである。また、前者の構成要件(2)の「該函状鎖片1を腹合せに対向する両隣りの函状鎖片1」は後者の構成要件(1)の「バンド縦方向において互に転位せられた二組の鞘」と全く同一内容を示すものである。
(2) 次に、前記実用新案の構成要件(2)の「ほゞU字型に折り曲げてその両端部6の内側面をほゞ平坦に形成した各一対の連片5、5の各一方の脚部を挿入する」との点は、本件特許権の要件中「結合リンクがバンドの縦縁中に設けられたU字形結合彎曲片により形成せられていること」と同一であり、
(3) 前記実用新案の構成要件(2)の「各一対の連片5、5の各一方の脚部を揃えて挿入し」は本件特許権の構成要件(3)の「結合彎曲片は各二個ずつその一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入せられ」と同一内容であり、
(4) 前記実用新案の構成要件(3)の「各脚部6、6の内側面を常時に底板7の両端面を弾圧せしめる」は、本件特許の構成要件たる「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し、かつバンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられていること」と、同一内容である。
たゞ、右実用新案が本件特許と異なるところは、
(1) 前者においては、函状鎖片1の両端部2を折り曲げ、バンドの伸延時に底板7が圧縮されても連片5が外方に出ないように押えていること、および、
(2) 函状鎖片1の両端部2に切欠3を設けていること
の二点である。
しかし、本件特許においては、右(1)の連片5が外方に出ないようにするために、U字形結合彎曲片に横溝を設けてあり、また、右(2)の点は右(1)の構造に対応するため必然的に要求される構造に過ぎず、これらの点は本質的な構成要件の差異ということができない。けだし、右実用新案は鎖片自体が弾条底板を備え、また両端部2に折り曲げ辺を設けた点に考案があり、連片5はその両端部6の内側面をほゞ平坦に形成したために長く伸延し得る点において新規な実用新案を構成するものであるが、両者は中空リンクと関節的かつ伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回し得るように構造されている点において、同一の構成を有し、同一の作用を行うものであるので、右実用新案の差異は実施態様の差に過ぎず、単なる設計変更にとどまるものというべきであるからである。
次に、図面番号Ⅱ、すなわち実用新案第四五一、二九二号の構成要件は、
(1) 管状の上片1と下片6とを互に環片を介し交互に連鎖した鎖帯において、各上片1の上面にその両側縁寄りの部分を漸次低くした斜面2、2を形成し、ほゞU字形にして内側縁に互に対向する突出部7、7を設け、
(2) 一方の分岐片10を他方の分岐片10に比し外方に多く開張せしめた環片8一対宛を、各その一方の分岐片10を前記上片の斜面2の内側に合致せしめてこれを上片1の両端口内部に挿入するとともに、他方の分岐片10´をそれぞれ該上片1に対し千鳥状をなして腹合せに対向する各下片6、6の両端口部内に挿入し、
(3) 両端部を折り曲げて掛片5を形成した葉形の弾機4の頂部を上片1と下片6との内底面に接するごとくして収納し、掛部5を前記突出部7の内側の凹みに掛らせて環片8の両分岐片をそれぞれ各上片1の上面と下片6の下面とに弾圧させているものである。
してみれば、用語こそ異なるが、右実用新案も本件特許もリンクバンドに関する発明又は考案であり、実用新案の上片1および下片6は本件特許の鞘、葉形弾機は彎曲板発条、環片8は結合彎曲片に該当すること、いうをまたない。両者が主要部分において全く同一であること、図面番号Ⅰのものと異らない。右実用新案の鞘は管状であり、各上片1はその上面において両側縁寄りの部分を漸次低くした斜面2、2を形成し、本件特許と多少形が異なるけれども、本件特許の鞘が任意の断面形の円筒状鞘で、「中空リンク」が関節的に伸延可能に「結合リンク」により結合せられ、中空リンクに挿入せられた発条板の発条作用に抗して全体が伸延可能ならしめられるのと、構造上も作用上も何ら変りはなく、これ亦設計上の変形であるに過ぎない。さらに、実用新案の環片8は一方の分岐片10を他方の分岐片10´に比し外方に多く開張したものであるが、これ亦「結合彎曲片」の範疇に含まれる一種の設計的形体であるというべきである。右実用新案が実用新案としての新規性を有するゆえんは、弾機4の両掛部分5、5がそれぞれ環片8の突出部9の内側の凹み内に嵌入して支持しているので、環片と弾機とが結合一体となり、環片8のU字形底面は上下両片の端縁を二重に被覆しているので、環片と弾機とが各別又はいつしよに脱出することを防ぎ、上片相互又は上片と下片とが互にくいちがいに摺動することがない作用効果を有する点にあるが、結局本件特許の思想の範疇内は包含される一種の実用新案にほかならない。図面番号Ⅲに示されるリンクバンドは、いわゆるマークⅦと称せられる製品であるが、図面番号Ⅰのものの形状を多少変更したものに過ぎないことは、控訴人も認めるところであるから、これと同様本件特許の権利範囲に属することは、多言を要せずして明らかである。右のとおり、図面番号Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの構造を有するリンクバンドはいずれも本件特許と同一又は類似の構造を有するものであつて、本件特許の権利範囲に属するものといわなくてはならない。
4、控訴人らは、本件特許明細書の請求の範囲の記載中「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し且バンドの伸延或いは彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条を設ける」とあるのを、結合彎曲片を板発条の端と横溝との掛合いにより鞘中に確保する意味だと主張する。しかし、特許権の内容は特許請求の範囲に限定されるもので、附記はその内容となるものではない。前記控訴人らの見解は特許明細書の記載中、附記一を根拠とし、それが特許権の内容をなすものと解するところに、重大な誤りをおかしているのである。ひつきよう、前記「結合彎曲片を鞘中に確保し」とは、彎曲板発条自体の形状より生ずる初張力および結合彎曲片を鞘中に挿入した場合に生ずる張力による彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に確保する作用を示すものであつて、前記板発条の端と横溝との掛合は、彎曲片がバンドの伸延に際し板発条が圧縮された場合に外方に逸脱しないようにする目的を有するに過ぎず、本件特許の必要々件ではないのである。
5、控訴人らは、その主張の実用新案にかゝるバンドが諸外国で特許登録をされていることをもつて、その本件特許と牴触しないことを主張するもののようである。しかし、これらの諸外国中、イタリー、スイス、フランス等においては、発明が新規であるか、また技術的進歩を示すものであるかどうかを審査しないで特許が与えられるし、カナダでは、アメリカと同様、新規性および技術的進歩性について審査を経るけれども、それが先願の特許を侵害するかどうかは審査せず、これについては裁判所又は前審審査と関係のない特許審判部において行うことになつているのであるから、これらの国で特許登録を得たということは、先願者たる被控訴人の特許権の権利範囲に属さないとする根拠には、とうていなり得ない。ことに、南アフリカ連邦特許裁判所およびカナダ国モントリオール控訴裁判所は、明らかに本件における図面番号Ⅰの物件に相当する「コロネツト」およびⅢの「マークⅦ」の各バンドにつき、それが被控訴人の特許権を侵害することを認めており(甲第三八、第四四号証)、その他にも同種の物件によつて被控訴人の特許権の侵害されたことを認めた外国判決はきわめて多いので、そのことが本件特許に対する世界の支配的観念を示しているものといえよう。
6、なお、被控訴人は、かつて訴外株式会社竹本商店に対して本件特許権の日本国内における独占的実施権を与えていたが、現在では、その実施契約期間が満了している。しかし、将来再び同会社との間に実施契約の締結される可能性が全くない、との控訴人らの主張は争う。本件の本案訴訟たる東京地方裁判所昭和三〇年(ワ)第五、二四七号事件において、原告たる被控訴人が被告株式会社上野力蔵商店に対する訴を全部取り下げ、本件控訴人三名に対する損害賠償請求の訴を取り下げた事実は認める。
7、株式会社上野力蔵商店に対する本件仮処分申請を取り下げる。
(二) 控訴人らの主張
1、本件仮処分の対象について、第一審以来それが明白でないまゝに進行してきたが、被控訴人が当審における昭和三三年九月二日の口頭弁論で陳述した同日附準備書面によつて、始めて、被控訴人が控訴人らに対し製造、販売等を禁止せんとするものは、
(1) 被控訴人の特許番号第二〇九、七八八号の伸延可能なリンクバンドの特許請求範囲に記載されているとおりのもの、ならびに別紙目録二の
(2) 図面番号Ⅰならびにその説明記載のもの
(3) 図面番号Ⅱならびにその説明記載のもの、および
(4) 図面番号Ⅲならびにその説明記載のもの(MARK Ⅶとも表示されている。)
の三者であることが判明した。
しかし、右(1)の被控訴人の特許の請求範囲記載の物件を、控訴人中の何人も製造したことも、販売したこともないから、控訴人らがかゝる物件につき仮処分を受くべき筋合はない。次に(2)の図面番号Ⅰならびにその説明記載のものを各控訴人において作成又は販売していることを認める。これは、現在訴外村井寅吉に属し、控訴人有限会社山田製作所、同野口尚彦、ならびに被控訴人が当審において仮処分申請を取り下げた前の本件仮処分の共同債務者株式会社上野力蔵商店の代表取締役上野力蔵、控訴人株式会社館林商店の代表取締役館林精之助および控訴人有限会社山田製作所の代表取締役山田績が各個人としてそれぞれ実施権を有する登録第四五九、八〇二号の実用新案にかゝるものと同一である。本訴は、したがつて、控訴人らがこの実用新案権の実施をすることが、被控訴人の権利を侵すものであるかどうかに帰着する。(3)の図面番号Ⅱならびにその説明は、その登録の日である昭和三一年一〇月三日から昭和三二年一一月一三日までは前記山田績に属したが、現在では村井寅吉の権利になつている登録第四五一、二九二号実用新案の構造と同一構造を示している。この実用新案は登録されたが、山田はもちろん、その他何人もこれを実施してリンクバンドを作つたことはない。したがつて、控訴人中のだれかが図面Ⅱならびにその説明にある対象物を作成し、また将来その作成を反覆するおそれあるというような事実はないが、元来この実用新案は被控訴人の特許の権利範囲外のものとして登録されたものであるから、仮に控訴人らが権利者村井寅吉の同意を得てこれを作成する場合ありとするも、被控訴人はこれが中止を求めることはできないはずである。さらに、(4)の図面番号Ⅲならびにその説明記載のものを控訴人らが製作、あるいは販売、拡布していることは認める。これは、被控訴人も主張するように、マークⅦの商品を表示しており、図面番号Ⅰならびにその説明の示す前記登録第四五九、八〇二号の実用新案権を実施するものである。両者の差異は微差であつて、その作用も効果も同一であり、いずれの特許、いずれの実用新案についても許容せらるべき実施形の一つである。しかし、この図面番号Ⅲは、本件仮処分申請の際にも示されず、また仮処分決定中にもこれを示していない。かゝる新規の対象物を異議事件の控訴審において仮処分の対象として追加し得べきではない。このことについては、次に詳しく主張する。
2、元来仮処分異議事件においては、前になされた仮処分(本件について言えば、昭和三〇年四月八日附東京地方裁判所昭和三〇年(ヨ)第一、八三五号事件決定)を認可するか、又は取消もしくは変更するかのみが問題である。本件においては、原裁判所はこれを認可したので、この判決に対して控訴が提起されたところ、当審において第一審判決の認可した仮処分決定の表現に不備のあることが発見され、これを是正すべく、被控訴人側より本件仮処分の対象を特定するの試みがなされたのである。しかし、それにもおのずから限度があり、原決定に無形に包含されていたもの以外の対象にこれを及ぼすことはできない。しからざれば、控訴審が新たな仮処分をしたと同様のこととなり、仮処分の管轄に関する民事訴訟法第七五七条、第七六二条に違反することになる。けだし、本事件の本案はなお第一審に係属しており、控訴審には係属しておらぬのである。本件仮処分決定が対象としている、本件特許の物件に類似する構造をもつ伸延可能なリンクバンドとは結局図面番号Ⅰに該当するものにほかならないことは、一件記録に徴して明白であり、また、本件仮処分の本案たる東京地方裁判所昭和三〇年(ワ)第五、二四七号事件においても、マークⅦは被控訴人が製造禁止を求める対象となつていないのである。本件において、被控訴人が仮処分の対象として主張する物件中、(1)本件特許請求範囲記載の物件および(3)図面番号Ⅱの物件については控訴人らがこれを製作したという事実も、将来製造するであろうというおそれもなく、後者について現在この実用新案の権利者でもないから、これについては仮処分の必要がない。さらに(4)の図面番号Ⅲの物件は本来の仮処分申請の対象ではないから、控訴審においてこの対象につき仮処分を認可する判決をすることは不可能であつて、そんなことをすれば、管轄規定に違反することになるであろう。結局本訴の争点は、(2)の図面番号Ⅰおよびその説明のもの、すなわち登録第四五九、八〇二号の実用新案にかゝるリンクバンドを、控訴人らの製造販売することが、被控訴人の有する特許第二〇九、七八八号の権利を侵害するかどうかの一点に帰するのである。
3、登録第四五九、八〇二号の実用新案そのもの、又はこれを実施して作つた製品が、被控訴人の特許第二〇九、七八八号に牴触するかどうかについて、控訴人らは前者は後者の権利範囲に属さないものと考える。その理由は、要するに、後者の発明において、彎曲板発条が積極的に結合彎曲片を鞘の中に常に確保している点が、その発明の必須要件であると認められ、その確保手段は明らかに彎曲板発条のみによるものであるのに、前者においては、これと異なり、連片を函状部に確保するものは、函状部分の両側部の折り曲げられた部分であるからである。被控訴人は、彎曲板発条を鞘の中に入れたときに生ずる初張力、および結合彎曲片を鞘中に挿入することにより加わる張力によつて、彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に確保する作用をする、と主張する。しかし、被控訴人のいう右初張力はさまで強いものではなく、強過ぎては人の手首に捲くに適しない。しかも、彎曲片もその他の部品も平滑に磨き上げられたものであるから、表面の摩擦は少なく、したがつて、少しの衝撃によつて滑り出ることが想像されるが、人間の手首の運動は、肱を中心とする小円弧運動も、肩を中心とする大円弧運動も時には相当大なる遠心力を伴ない、かゝる場合の遠心力は必ずや手首に捲き付けられたブレースレツトにも働くものであつて、もし被控訴人の主張するように、単に彎曲片を鞘と発条との間に押し込んだストレスだけで保持されるブレースレツトでは、これを使用するとき、たちまちに発条と彎曲片との脱出を見、衆人環視のうちに笑の種をまくこととなろう。かようなものは商品とはならぬ。わが国の特許実務では、たとえ当事者からこのような説明があつても、それだけで直ちに特許を無効とすることはなく、明細書中の他の記事から発明者の本旨をくみとり、ともかく特許は無効審決のあるまではこれを有効とし、(本件についていえば、彎曲片および板バネの構造の点をもとり入れて)権利範囲の判定をする方向に進んでいるのである。
4、本件特許の内容とする技術的思想は、両端を開放した鞘と、U字形結合片と、板発条の三者によつて時計バンドを成立させるものではあるが、しかし決して右三者のみで時計バンドを構成させようとするものではなく(この三者のみでは、いかなる意味でも完全な時計バンドたり得ない。)、これらをその提案したような特定の結合方式によつて結合させることをも、その特許発明の必須的要件としている。そして、本件特許においては、その全体的結合方法として、U字形結合片と板発条とをその主張の考案で嵌合させるということが提案されているのである。これに対して、控訴人らの使用する登録第四五九、八〇二号の実用新案においては、鞘の両端部底面を延長して、これによつて結合片を外方から被覆することを新たな結合方式として採用したものであり、その結果、鞘、結合片、板発条の果す構造的意味は、本件特許におけると全く異なるものとなつた。すなわち、本件特許は、バンド全体の結合方式としてU字形結合片と板発条とが鞘中で嵌合する方法を採用したから、極薄の女子用時計バンドの製作は不可能であるが、右登録実用新案の構造によれば、鞘の両端外方から結合片を被覆するので、極薄の時計バンドも容易に製作され、しかも十分な耐久力を有するのである。両者はこのように実際上も顕著に相違するものであつて、この点に関する控訴人らの主張は、本件特許権取得後、わが国のみならず、諸外国において、右実用新案と同一又は類似の構造になる時計バンドにつき特許が出願され、その一部は本件特許と並存して登録されている事実によつても、裏書されているのである。
5、仮に控訴人の特許発明と控訴人らの実用新案とが同一の発明考案を内容とするものであつても、後の実用新案が前の特許のある故をもつて審判により無効とされるまでは、その実用新案にかゝる物を製造し販売することは、実用新案権者の権利であり、前の特許権者はその差止を請求することができない。また、いわゆる権利利用の関係についていつても、前発明の利用とは前発明そのものを利用することであつて、その構成中の一、二の工程を使用することではない。およそ、発明者が使用する物理上の工程、化学上の変化は、それを一つ一つとしてみれば、おうむね公知のものであつて、これを組み合せて一発明が成立することが多いのである。発明中に使用された工程の一又は二を使用することをとらえて、前行発明の利用であるとすれば、ついには公知の自然法則そのものを独占する者を生ずるであろう。かようなことが許されてよいわけがない。本件被控訴人の発明は、鞘、バネ、バネおよび彎曲片を鞘中に確保する方法の三つの組合せから成立している。この三者をそつくりそのまゝ利用し、これに何らかの新工夫を加うるがごとき場合(例えば、修繕をしやすいようにするためにバネの取替を容易にするように)に、発明の利用ありということができよう。しかし、本件実用新案は、右三要素のうちの重要なる要件、すなわちバネおよび彎曲片の確保方法を異にしている新規な考案であるから、決して被控訴人の先行特許を利用するものではない。
6、さらに、本件仮処分の必要性につき、被控訴人において本件仮処分をしなければ、いちじるしい損害又は急迫なる強暴を受ける虞があるであろうか。被控訴人は、かつて、本件特許権を訴外竹本茂次に譲渡したと公言し、また、本件特許は日本においては竹本に独占的に実施させ、自社は実施しない約束であるともいつている。してみれば、竹本が本件特許の日本における独占的実施権者であり、仮に控訴人らが被控訴人の特許権利範囲内の行為をしても、直接に被控訴人に何ら実質上の損害や不便を与えることはないわけである。而うして、被控訴人と竹本との間に技術援助契約でもあり、竹本が本件特許を利用して製造するバンドの数量に応じ被控訴人に対してロヤリチーを支払うという約束があるかというのに、被控訴人は今日にいたるまでこの技術援助契約の内容を示さず、また、外国為替及び外国貿易管理法(昭和二四年法律第二二八号)第二七条によれば非居住者に対する金銭の支払ならびに支払の約束は政府の許可がなければ無効であるのに、右ロヤリチー支払の契約が政府の許可を得た事実を明らかにしてもいないのである。そして、仮に被控訴人へのロヤリチー支払契約が存在し、それが政府の許可を得ているとしても、昭和二九年一一月三日の竹本、高橋、越村の間の契約(乙第一号証の一、二)およびこれに基く越村から竹本に対する業者の指定(乙第八号証の一、二)はまだその効力を維持しており、本件控訴人をも含む九人の業者との間に実施料を協定し、これをもつて被控訴人へのロヤリチー契約を調節することができるので、必ずしも控訴人らの行為を原因としてロヤリチー収入の減少を憂いるのに及ばないわけである。
7、本件仮処分の必要性がないことについては、さらに次の主張を附加する。被控訴人は、訴外株式会社竹本商店が本件特許権につきわが国において独占的実施権者であつて、同商店が被ることあるべき現実の損害を防止するため、本件仮処分の必要があると主張するもののようであるが、本件において今日まで被控訴人と右竹本商店との間に技術的援助契約又は実施契約が締結され、かつ関係官庁の認可を得た旨の疎明はないのみならず、仮に被控訴人と竹本商店との間に、過去においてそのような実施契約が存したとしても、現在においてはすでに消滅しているはずであり、かつ将来再びこの両者の間に実施契約の締結される可能性は全くないから、本件仮処分の必要性又は緊急性は完全に消滅したといわなくてはならない。なお、特許権侵害に対する仮処分の必要性の問題として、実施料相当の損害の発生をもつて、その必要性の訴訟法的要件を満足せしめるものとは、とうてい考えられない。しかも、被控訴人は、本件仮処分の本案訴訟である東京地方裁判所昭和三〇年(ワ)第五、二四七号事件につき、昭和三六年三月一六日に開かれた口頭弁論において、取下前の本件仮処分の共同債務者株式会社上野力蔵商店に対する訴を全部取り下げるとともに、控訴人有限会社山田製作所、同株式会社館林商店および同野口尚彦に対する損害賠償請求の訴をも取り下げた。したがつて、被控訴人主張の本件仮処分の必要性はも早消滅したものといわなくてはならない。
8、被控訴人は本件特許権侵害は多数の外国判決によつても明認されていると主張するが、これらの外国の事件においては、当事者がいかなる対象物を提出したかが不明であるし、その判断の基礎になつた外国特許の明細書の内容、なかんづく特許請求の範囲も明らかにされていないから、その法廷における論点が本訴と同一であつたとは云えぬ。また、特許法および民事訴訟法については各国の法制が非常に相違する。ことに特許法の分野において、発明の定義、観念は、わが国のそれとこれら諸外国のそれとは決して同一でなく、認可された特許権の内容、効力、訴訟手続等につき、各国それぞれに趣きを異にしているのである。かような各国の国内法制の差異にもとづいて、いわゆる特許独立の原則が国際的に認められ、特定の技術的考案に対して付与された甲国の特許権と乙国の特許権とは、その内容および効力等に関して全く関わりのないものとされているのであつて、これを同一発明と判断するのは、厳密にいえば、発明者又は出願人の主観的考察以外の何ものでもない。かようなものをもつて、本件判断の資料とすることはできないと考える。
〔編註その一〕 本件における目録の内容は左のとおりである。
目録 二
(一) 管状の上片と下片とを互に環片を介し交互に連鎖したる鎖帯において、各上片の上面にその両側縁寄りの部分を漸次低くなしたる斜面を形成し、ほゞU字形にして内側縁に互に対向する突出部を設け且つ一方の分岐片を他方の分岐片に比し外方に多く開張せしめたる環片一対宛を、各ての一方の分岐片を前記上片の斜面の内側に合致せしめてこれを上片の両端口部内に挿入するとともに、他方の分岐片を夫々該上片に対し千鳥状をなして腹合せに対向する各下片の両端口部内に挿入したる後、両端部を折曲げて掛部を形成した葉形の弾機の頂部を前記突出部の内側の凹みに掛らせて、環片の両分岐片を夫々各上片の上面と下片の下面とに弾圧せしめた伸延可能なリンクバンドー図面番号Ⅰのものに対応する。
(二) 前記上片を挿入する外装片を取付け、上片及び下片が外底面の両側縁の端口部に各二個宛の折曲げ片を有し、環片には前記突出部を有せず、前記掛部は僅かに彎曲して環片の挿入を容易にし、上片には斜面を設けず、環片の両分岐片が簡単なる直線形をなす等の外、前記(一)と同一の構造を有する伸延可能なリンクバンドー図面番号Ⅱのものに対応する。
(三) バンドの縦方向で相互に転位せられ、バンドの伸展方向に対して横方向に軸線を相互に平行に配置された二層の中空スリーブより成り、これら中空スリーブがバンドの縦方向の縁で発条作用に抗して旋回可能のU字形結合片によつて連絡され、各連結片の中央部の一半が他半に対して凹まされていて、下方のスリーブ壁から折曲げられた舌状部を収容するようになつており、各連結片が一方の脚を一方の層のスリーブの開放端内へ、他の脚を他方の隣接せるスリーブ内へ挿入されて、下方のスリーブ壁の折曲舌状部によつてスリーブ内に確保され、且つ各スリーブ内には彎曲板バネが設けられてあるリンクバンドー図面番号Ⅲのもの(MARK Ⅶとも称せられている。)に対応する。
図面説明書(図面番号Ⅰ)
一、図面の略解
第一図は腕時計バンドの一部を収縮せる状態にて且つ一部を欠截して示す正面図、
第二図はその平面図、
第三図は第二図の切断側面図、
第四図は腕時計バンドを伸延した場合の一部を取出して示す正面図、
第五図乃至第九図は腕時計バンドを構成する部分の斜視図であつて、第五図に第六図に示す上部函状鎖片に装着せられるカバー、第六図上部函状鎖片、第七図は底板、第八図は下部函状鎖片、第九図は連片を示すものである。
二、構成及び作用
図示の腕時計バンドの構成は、両側縁及び両端部2を折曲げて天蓋と周壁を形成し、該両側縁を更に折曲げて爪4を又両端部2に切欠3を設けた上部函状鎖片1にカバー11を装着し、この上部函状鎖片1中に、第七図に示す如き両端部8を上方に折曲げて弾性を有せしめた底板7を前記爪4に依り支持せしめる如く挿入し、更にこれにほぼU字形に且つ内外面とも平坦な二本の脚6、6を有するように形成した各一対の連片5、5の各一方の脚6を挿入し、他方の脚6を上部函状鎖片1と腹合せに対向する他方の組の転位して位置する両隣りの下部函状鎖片1の両端部内に挿入し、次いで、各連片5の肩部を前記両端部2に依り被覆し、以て之等多数の函状鎖片を順次連結しているものである。而して前記の構成を有する腕時計バンドは、第五図乃至第九図に示されている各構成部分即ちカバー11を装着する上部函状鎖片1及び下部函状鎖片1、底板7及び連片5を第一図乃至第三図に示す如く組立てて成る結合リンクバンドとして形成せられ、斯くして該リンクバンドは、その伸延に際して連動する連片5及び底板7の相関関係に於て、彎曲片5の旋回に依り底板7の発条力に抗してリンク運動をなし、その結果底板7は前記連片に依り圧縮せられるものであり(此の場合連片5の外方脱出を防止するために両端部2を折曲げて前記連片の肩部に沿わしめている。)バンドの収縮は前記の如く圧縮せられた底板7の発条力に依り旧位に復せられるものである。尚、切欠3は腕時計バンドの長さの大小を調節するため、函状鎖片1より連片5を取脱すか或は該切欠より挿入組立てる場合に適するものであり、下部函状鎖片1の側壁の突起10は隣りの函状鎖片とに間隙を形成して毛を挾まないようになしているものであり、カバー11はその表面に模様を刻し、バンドのデザイン的効果を増しているものである。
(Ⅰ)
<省略>
<省略>
<省略>
図面説明書(図面番号Ⅱ)
一、図面の略解
第一図は腕時計バンドの一部を収縮せる状態にて示す正面図、
第二図はその平面図、
第三図は第二図の切断側面図、
第四図は腕時計バンドを伸延した場合の一部を取出して示す正面図、
第五図乃至第八図は腕時計バンドを構成する部分の斜視図であつて、第五図は上片、第六図は弾機、第七図は下片、第八図は環片を示すものである。
一、構成及び作用
図示の腕時計バンドの構成は、各上片1の上面に其の両側縁よりの部分を漸次低くなしたる斜面2<省略>2を形成し、ほぼU字形にして内側縁に互に対向する突出部9<省略>9を設け且つ一方の分岐片10を他方の分岐片10´に比し外方に多く開張せしめたる環片8一対宛各其の一方の分岐片10を前記上片の斜面2の内側に合致せしめて之を上片1の両端口部内に挿入すると共に他方の分岐片10´を夫々該上片に対し千鳥状をなして腹合せに対向する各下片6<省略>6の両端口部内に挿入したる後、両端部を折曲げて掛部5を形成したる葉形の弾機4の頂部を上片1を下片6との各内底面に接する如くして収納すると共に掛部5を前記突出部9の内側の凹みに掛らしめて環片8の両分岐片を夫々各上片1の上面と下片6の下面とに弾圧せしめているものである。而して前記の構成を有する腕時計バンドは、第五図乃至第八図に示されている各構成部分即ち上片及び下片1、6弾機4及び環片8を第一図乃至第三図に示す如く組立てて成る結合リンクバンドとして形成せられ、斯くしてリンクバンドは、その伸延に際して連動する弾機4及び環片8の相関関係に於て、環片8の旋回に依り弾機4の発条力に抗してリンク運動をなし、その結果弾機4は前記環片に依り圧縮せられるものであり(此の場合環片8の外方脱出を防止するために、弾機4の両掛部5<省略>5を夫々前記環片の突出部9<省略>9に掛止せしめている)、バンドの収縮は前記の如く圧縮せられた弾機4の発条力に依り旧位に復せられるものである。
(Ⅱ)
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“MARK Ⅶ”の図面説明書(図面番号Ⅲ)
一、図面の略解
第一図は腕時計バンドの一部を収縮せる状態にて示す正面図、
第二図は同様に伸延せる状態にて示す正面図、
第三図乃至第六図は腕時計バンドの各構成部分を斜視図にして示すものであつて、
第三図は上部リンク鞘、第四図は板発条、第五図は彎曲片、第六図は下部リンク鞘である。
一、構成及び作用
図示の腕時計バンドの構成は、上部リンク鞘1及び下部リンク鞘11が、夫々両端縁間に間隙を存して断面<省略>状に形成され且つ上部及び下部リンク鞘1、11の双方又は一方には必らずその両端に折曲部2を設け、前記上部及び下部リンク鞘を結合する彎曲片5は内外面共平坦な二本の脚6、6より成ると共に前記彎曲片は板発条7を内方より掛合する掛止部を有せず、以てバンド伸延に際し、連動する彎曲片5及び板発条7の相関関係に於て、前記彎曲片の外方脱出を防止するために下部リンク鞘11の折曲部2を彎曲片5の肩部3に沿わしめているものである。而して前記の構成を有する腕時計バンドは、第三図乃至第六図に示されている各構成部分即ち上部及び下部リンク鞘1、11、板発条7及び彎曲片を第一図及び第二図に示す如く組立てて成る結合リンクバンドとして形成せられ(此の場合先づ各鞘中1、11には夫々板発条7を挿入し、彎曲片5を各二個づつその一方の脚6を以て一方の組の上部リンク鞘1の開放端中に挿入し、その他方の脚6を以て他方の組の転位して位置する隣接せる下部リンク鞘11中に挿入した後、折曲部2を折曲げて、これを彎曲片5の肩部3に沿わしめる)、斯くして前記リンクバンドは、その伸延に際し彎曲片5の旋回に依り板発条7の発条力に抗してリンク運動をなし、その結果板発条7は前記彎曲片に依り圧縮せられて伸延せられるものであり、バンドの収縮は前記の如く圧縮せられた板発条7の発条力に依り旧位に復せられるものである。尚第一図に示す如く上部リンク鞘1には切欠部4が設けられているが、これは図示されないバンド装飾用のカバーが前記上部リンク鞘に装置せられる際の掛止部であり、又上部リンク鞘1には切欠8及び第六図に示す下部リンク鞘11には切欠9が設けられているが、両切欠は板発条7の突出部10に相当して形成せられているものであり、これはバンド伸延に際しての逃げであつて、このために彎曲片5のリンク運動範囲は拡大せられ、換言すれば板発条7の圧縮代が大となり、従つてバンド伸延時の総長さが大となつているものと思考せらる。
(Ⅲ)
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